2017.08.10更新

7/25に千歳烏山区民会館で行われた世田谷バスキュラーアクセス懇話会には医師12名、看護師22名、臨床工学技士29名、事務3名、総勢66名(全16施設)の透析従事者の方々にお集まり頂きました。ご参加頂いた皆さま、ありがとうございました。
シャント再循環の評価方法につきご講演頂いた3施設の技士さんにも感謝申し上げます。
講演内容の訂正と当日のアンケートで頂いたご質問のQ&Aを掲載致します。

【Q1】VA再循環があるとΔBV(循環血液量変化率)は「下がりにくい」のではなく「下がりやすい」のではないか?
【A1】間違いをご指摘頂きありがとうございました。正しくは「下がりやすい」です。VA再循環があると透析回路内の血液は濃縮しやすく、体液は濃縮しにくくなります。プラズマリフィリングを超えて除水した場合にもΔBVが著明に低下します。VA再循環によるΔBVの低下と除水過多によるΔBVの低下を区別するのは難しいことも多いのですが、VA再循環によるΔBVの低下は透析開始直後からみられることが特徴です。

【Q2】シャント再循環の理想的な評価法は?
【A2】絶対値としては他の方法に比べHD02を用いた再循環率測定(5%以上ならVA不全あり)が有用との報告はありますが、クリニックごとに尿素希釈法、KT/V、クリアランスギャップ、ΔBV(循環血液量変化率)のいずれかに指標を決めて、患者さんごとの経時的変化(相対値)を追うことが重要と考えます。

【Q3】尿素希釈法のS(体循環血漿中の尿素窒素濃度)は非シャント肢の静脈血で代用可能か?
【A3】可能です。回路からサンプリングする際には、施設ごと測定者ごとのばらつきを少なくするために、透析医学会の推奨する方法で行いましょう。非シャント肢からの採血であれば、このばらつきをなくすことができます。

【Q4】シャント狭窄があるがPTAまでしのぎたい場合には駆血して透析するのとQb(血流量)を下げて透析するのではどちらがよいか?
【A4】脱血と返血の間で駆血出来るのであれば駆血でよいと思います。返血より中枢側で駆血すると再循環してしまうので、駆血する位置にご注意下さい。再循環しそうな場合にはQbを下げた方が賢明でしょう。

【Q5】前腕ループグラフトの患者さんで透析中に肘を曲げて新聞を読んでいる時間が長い患者さんにはどう注意したらよいか?
【A5】肘を曲げて透析した場合と肘を伸ばして透析した場合に再循環率がどの程度変化するか比較してみて下さい。根拠があると患者さんの納得が得られやすいのではないでしょうか。認知症などで患者さんの協力が得られない場合にはシャントの治療も考える必要があります。

【Q6】PTA(経皮的シャント拡張術)で拡張した部位を穿刺してはいけませんか?
【A6】PTAで拡張した部位は再狭窄の頻度が高いので、なるべく穿刺を避けるのが理想ですが、穿刺部位が限られる患者さんではやむを得ないと思います。

以上、ご質問ありがとうございました。来年のテーマについてもたくさんのリクエストを頂きました。
来年も診療に役立つ内容を企画して参りますので、楽しみにしていて下さい。